re: アニメのビジネスモデル

A. 30分CM
1960年ごろに確立。何らかの商材(玩具等)を持つ企業をスポンサーとし、「番組全体をCM化する事で商品を売って儲ける」というビジネスモデル。番組本体はタダ見で問題ないという考え方で、そのための合理的なデバイスとしてテレビ放送を利用している。

B. OVA
1983年ごろに確立。テレビ放送せず、内容のCM化もせず、作品自体の魅力によって映像コンテンツその物や周辺商材を売る、というビジネスモデル。ビデオデッキの普及とアニメ視聴層の高齢化に伴って可能になった。

C. メディアミックス
1995年ごろに確立。最大の定着要因は新世紀エヴァンゲリオンの成功。テレビアニメの放送開始に合わせ、雑誌でのマンガ連載、ゲームの発売、小説の新刊発売などを同時に実行して注目度を上げ、全体的に儲けるビジネスモデル。自前で商材を用意した上で映像も売るという事で、30分CMとOVAのハイブリッドとも言える。

D. 亜OVA
1995年以降に確立。OVAと同様の考え方だが、最初に1回だけテレビ放送する。そうする理由は、その方が売れるから(だった。少なくとも当時は)。メディアミックスから構成要素を削ったサブセットとも言える。

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30分CMは最初に映像を全て見せてしまうが、そもそも映像本体で儲けようとしていないので問題ない。OVAは映像その物を売ろうとしていて、だから事前に映像を見せない。これらは辻褄が合っている。問題はメディアミックスとそのサブセットである亜OVAで、「エヴァンゲリオンが大成功した」という理由で追認され大量の後追いが発生したが、映像その物を売りたいのに最初に映像を全て見せる、というやり方は元々整合性が危うい。1995年ごろは、テレビ放送とDVDの画質の差、伝送手段の限界による地域格差、個人の録画能力の限界などの有利なファクターも存在したが、10年経った現在では大半のファクターが実効性を失い、直接的な購入の動機にはならなくなっている。さらにネット配信、P2PYouTube、ニコ動といったシステムは「一度見るだけなら誰でも確実に実行できる」という環境を(合法かどうかは別として)実現し、この傾向に拍車をかけた。その結果、権利者と視聴者の関係は「圧倒的な視聴者優位」となり、「何を売るために何をどこまで見せるのか」という権利者主導の商売上の都合に過ぎなかったはずの話は、「どの利用までがフェアでどこからアンフェアなのか」といった視聴者主導の匙加減の話や、「面白いと思ったら(仮にもう見ないとしても)DVDを買って還元すべき」といった道徳の話にスライドした。そして現在に至る。

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via
http://d.hatena.ne.jp/y_arim/20080130/1201711942